春の山歪ながらも丸きかな

よくみると山の輪郭は季節によってかなり変わることに気づかせられる。
私の家は谷筋の道に沿って建てられているのだが、そこから急峻な谷の崖の上の山が切り立って迫っているのが見える。
これは無邪気な想像に過ぎないのだが、鵯越の逆落としの極秘作戦を秘めた義経の軍勢が、有馬街道を下って来て、この谷筋を南下、一ノ谷への逆落としに向かっていったのではないかと思うほど。
この様な岩山等は、冬になると照葉樹がすべて葉を落としてしまうので、その岩の輪郭、稜線がギザギザ凸凹に見える。
それが、座敷から今日眺めていると新芽が伸びて来て、徐々にそのごつごつした感じが隠されて丸みを帯びた輪郭に変わっていく。
そんな情景を詠んだ句ではないかと思う。
これが初夏となり、野生の藤で山一面が紫色になる時期も過ぎれば鬱蒼としてくるものだ。
季節の移ろいを上手に写した句だと思う。