平等院


蓮の句の秀句を選んでみた。

黒谷の松や蓮さく朝嵐 碧梧桐

全体として句は、散漫な感じを受けるが、この句から受ける印象は壮絶である。

黎明の雨はらはらと蓮の花 虚子

碧梧桐と対照的な情景を描いている。雨はらはらという描写がよい。

水泡の相寄れば消ゆ蓮の花 鬼城

写生の句。最近では、こうした句をみかけるとが、鬼城となれば別。

暁闇を弾いて蓮の白さかな 龍之介

強烈な蓮の花の白さ。あらゆる闇を弾く程の力が素晴らしい。

白うさいてきのふけふなき蓮かな 水巴

「きのふけふなき」という表現が秀逸

白蓮やはじけのこりて一二片 蛇笏

「はじけのこりて」という部分が面白い。

蓮の葉押しわけて出て咲いた花の朝だ 放哉

当然のことを詠んでいるけれど、「花の朝」ができあがるまでの過程を詠んでいるのが面白い。

白蓮のあまたは咲けど静かなる 秋櫻子
紅蓮はひとつ咲くさへ目にしるき 秋櫻子

この二句は、紅白の蓮の花の性質が全く違うと言っているところが面白い。

眼中の蓮も揺れつつ夜帰る 三鬼

酔って家に帰ろうとすれば、まだ、蓮の花の残像が残っていたのだ。

遠き世の如くに遠くに蓮の華 誓子

この世のものとは思われないという情景を上手に表現している。

蓮散華浮かべるに我慌てけり 耕衣

蓮散華の句は、結構詠まれているが、この場合は、散蓮の様子を描くというよりも、己の様子を含めて描写している客観写生である。