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オークションで祖父の画集を落札した。
家にもあるのだが、追想と呼ばれる別冊を紛失してしまい、ここの亡くなった母が残した唯一の文章が綴られているので、この別冊の為に購入した。

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 柘榴と題された母の小文。これを読むと母の声が聞こえてくるような気がする。若い頃は透き通るよい声の持ち主であった。、「この葡萄ももう魅力ないで、後はメロンも、梨も丸いもんばっかりやあ。何ぞ柘榴か毬付きの栗でも捜してきてくれんか。」というセリフで始まる文章は、文体には乱れがあるものの、母親が絵描きの祖父の為に静物画の材料を探しに野に出て、あるいは、家で薔薇や四季の草木を栽培していた昔を思いさせてくれる。

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画集に懐かしい絵が載っていた。早春の小豆島の段々畑。ちょうど今頃の季節だろうなあ。お遍路さんが鈴をチリンチリンと鳴らして通っていた段々畑の小径。まだ、作物は芽を出していないのでただ、鮮やかなブルーの空だけがだだっ広く感じられる場所だった。風景画家は季節とともに暮らし、季節と共に死んでいくのだと思います。母親も向こうでまた、祖父の画業の手伝いをしているのでしょう。

 息切らし畦登り来て島遍路