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碧に染むけんけん舟や夏の潮

祖父の絵がまたオークションに出されていた。
ひどく安い値段だが真筆だ。
「南紀のけんけん舟」という画題。
けんけん舟は、この地域独特の1本釣り漁の漁船で巨大な長い釣り竿を二本、左舷と右舷につきだして鰹を釣る漁なので、その竿が動く様子を「けんけん」(カナカ語が語源でぴょんぴょんという意味の説がある)と表現したことが、この奇妙な舟の呼び名になったようだ。現在のけんけん船は、大型の発動機を積んだしっかりした船であるが、祖父が描いたけんけん舟は、どうやら小さな焼き玉エンジンか、あるいは手漕ぎ、帆走の小さな舟らしい。
祖父はそういった小さな帆掛け舟を特に好んで描いていたし、眺めていると上機嫌だった。小豆島にいても、アトリエの沖合の海をそういった舟が通ると手を翳して遠くの方を眺めていたものである。