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  俳句結社童子の同人として日々目指しているのは客観写生であるが、いかんせんとも、主情を交えた句を日々の句作で作りがちである。童子の同人の方々から、精魂を込めた句集をお送りいただいてまことに恐縮であり、余の書棚には、数多の童子や句友先生方の珠玉句集が安置されており、日々、それらの句集を参考にすべく開いてみている次第である。
 そういった中で今日は、安藤ちさとさんがお送り下さった句集『小さき喉』を開いてみてをる。
 この方の句集を開いてみて感じたことは、客観写生に徹しているということ。日常の出来事を他の俳人の方と同様に詠み込んでおられるが、あくまで、己の存在を客観視されていることに感銘を受けた。
 九州で活躍されてをられるということだが、日々の精進、更に、客観写生を究めた句を期待したいところである。
 特に感銘を受けた句を下記に挙げた次第である。


   船頭の背に影落とす柳かな
   唄ひ手のもう終はりよと盆踊り
   垂直に皿に飛び込む秋の蠅
   各々のしぶきをあげて泳ぎけり
   秋水を静かにかけて鎌研ぎぬ
   湯上がりの廊下に残る寒さかな
   薄氷はがせば水のあふれけり
   天の川盆地は闇に沈みけり
   種袋みな達筆で名を書かれ
   『風土記』より紙魚ぞろぞろと走り出ず
   コスモスに囲まれ赤子泣き出せり
   削られし鉛筆にほふ立夏かな
   甲板に人あふれたる薄暑かな
   浮き島の形のままに草茂る

 いずれも凝縮された客観写生の表現でここまでの写生の境地に達することは、なかなかに困難であるが、日常生活の経験を陶冶し、句に注ぎ込むことの日々繰り返して、これほど表現に達し得たというのは、敬服に値するものだと思う。