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前回、写真に出した夢浮橋の写本の末尾の部分(左頁)を直接翻字するとこんな風に。

くらさむもあやしかるへけれはかへり
なんとし人しれすゆかしきありさ
まをえみすなりぬるをおほつかなく
くちおしくて心ゆかすなからまいりぬ
いつしかとまちおはするにかくたと
ゝしくてかへりきあれはすさまし
く中ヽなりとおほすことさまゝにて
人のかくしすへたるにやあらむとわか
御心の思よらぬくまなくおとしをき
たまへりしならひにとそ本にはへめる

これを漢字、濁点、読点等を付してようやく読める様にしたのが、次の例。

暮らさむもあやしかるべければ、帰り
なんとす。人知れずゆかしき御ありさ
まをもえ見ずなりぬるを、おぼつかなく
口惜しくて、心ゆかずながら参りぬ。
いつしかと待ちおはするに、かくたど
たどしくて帰り来たれば、すさまじ
く、なかなかなりと思すことさまざまにて、
人の隠しすゑたるにやあらんと、わが
御心の、思ひ寄らぬ隈なく落としおき
たまへりしならひにとぞ、本にはべめる。

これを更に本文異同を検証してようやく、注釈の作業に入るのだから大変。
三条西家証本の写本なので、青表紙本としては、非常に素性の良い本文であることが判るだろう。